アガサ・クリスティ『ABC殺人事件』
今回は『そして誰もいなくなった』で有名なアガサ・クリスティの
『ABC殺人事件』を読みました。
今となってはそのストーリーは数々のミステリで「おきまりのパターン」としてリメイクされています。
そんな『ABC殺人事件』について、私が読んで思ったことや豆知識を話していきます。
(注意:一部ネタバレが含まれます!)
01.ざっくりどんな話?
頭文字がAの街で頭文字がAの人が殺され、B、C……と続いて行くというイメージです。
日本なら、
という感じでしょうか。
「なぜABCの順番で殺して行くのか?」「犯人は誰か?」という難問に、名探偵ポアロが挑んでいきます。(本書は「ポアロシリーズ」の中の一冊です。)
02.私の推理
私は結構ミステリが好きなので、今回は「犯人のパターン」と「動機」を推理しながら読みました。
A、B、C...の殺害犯はすべて同一人物(犯人の推理)
これが一番オーソドックスでしょうか。
動機はなんであれ、一人の人間が、ABC...と順番に人を殺して行く、というパターンです。
A、B、C…の殺害犯の一部または全部が別人(犯人の推理)
個人的にはこれが真相だったら一番面白いなあと思いました。
どういうことかというと、、、。
まず誰かがAさんを殺します。
それを聞きつけたまた別の誰かが、「ちょうどBさんを殺したいところだったんだ!いまBさんを殺せば、Aさんを殺した犯人に罪をなすりつけられる!!」
と思いつき、Bさんを殺します。
ここでまた別の人が「ちょうどいい!!Cさんを殺して連続殺人犯のしわざに見せ掛けよう!」と思いつき、Cさんを殺す……という具合です。
これはいわゆる「便乗殺人」というもので、今回のような「なにかの順番にならって殺していく」という場合には割とよく使われる結末だと思います。
この場合、
「真犯人はAさんしか殺すつもりはなかったのに、他の人が便乗したことで連続殺人になってしまい、犯人が同一人物とみなされる」
というパターンと、
「真犯人はもとからA、B、C……と殺して行く予定だったのに、途中で別人が便乗してCを殺してしまったので、真犯人はA、B、D……の殺人を犯し、犯人が同一人物とみなされる」
というパターンにわけられます。
前者のパターンの場合、犯人は余計な罪まで被せられることになるわけですね(笑)
(便乗した殺人者はまさにそれを狙っているのです!)
A、B、C…のうち真の目的はただ一人(動機の推理)
いわゆる「カモフラージュ」です。
たとえばCさんを殺したいけれど、Cさんだけ殺すと人間関係から、犯人候補として自分があぶり出されてしまう……
そんなとき、犯人は
「A、B、C……と殺していけば、猟奇的な殺人とみなされて、Cさんを殺すことが目的だったことがバレないから、自分は犯人候補にならない!!」
と思うわけですね。
正直私は動機はこれでほぼ確定だ、と思いました。
03.読後の感想
私の推理が当たっていたかどうかは別として、正直な感想が
「うまくできてるなあ〜」
というものでした。
アガサ・クリスティは今から約100年前の作家です。
それなのにまったく古臭い感じがしないのです。
今となっては「お決まり」のパターンかもしれませんが、これを約100年前に書いたと思えば、アガサ・クリスティの才能に感服せざるを得ません。
私の評価としては、
読みやすさ……★★★★★
面白さ…………★★★★★
意外性…………★★★★☆
総合……………★★★★★
という感じでしょうか。
04.豆知識
『氷菓』で有名な米澤穂信さんの「古典部シリーズ」の第3作『クドリャフカの順番』は、この『ABC殺人事件』をモチーフにしてストーリーが展開していきます。
ちなみに第2作の『愚者のエンドロール』の副題「Why didn’t she ask EBA ?」(「なぜエバに頼まなかったのか?」は、アガサ・クリスティの『なぜエヴァンズに頼まなかったのか?』をもじっているものと思われます。
こんな感じで、現代の日本人作家にも、アガサ・クリスティの影を見ることができるのです。
それではこの辺で。失礼します。