フィリップ・K・ディック『いたずらの問題』
「つい出来心でいたずらを……」
幼少時代にはよくありましたよね?
でも国家レベルの「いたずら」だったらどうでしょうか?
ヤバいですよね?
今回は、そんな「国を揺るがすいたずら」
をしてしまった男の話。映画「ブレードランナー2049」の原作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』でお馴染みの、
フィリップ・K・ディック『いたずらの問題』を紹介します。
01.ざっくりどんな話?
「喜劇ディストピア」です。
「ディストピア」とは、簡単に言うと、
「『こんな世界嫌だ!』という世界を描いたもの」です。
この『いたずらの問題』では、近未来(2100年ごろ)を描いています。
町中の至る所に監視ロボットがうじゃうじゃいて、住民が何か「悪いこと」をしていないかを常に監視しています。(「キス」さえも処罰の対象です。)
そして何か「悪いこと」をしていることがバレると、全員匿名の「裁判」的なものにかけられてしまいます。
そして町の公園には「ストレイター大佐」の銅像が建てられていて、ストレイター大佐の考えに背くような人間は、即処罰の対象になる……。
嫌ですよね?
そして主人公はひょんな出来心から、ストレイター大佐の銅像にいたずらをしてしまうのですーーー。
02.読後の感想
読み終えて感じたことは、「こういうオチは珍しいな」というものです。
先ほども説明した通り、「ディストピア」ものは、基本バッドエンド(悲劇)です。
でも、この『いたずらの問題』は、「こんな世界嫌だ!」な世界を、皮肉的に、コメディー的に描いています。
なので読んでいて思わず笑えてきてしまうのです。
ディストピアもので笑える作品は、これが初めてだったので、新鮮でした。
それと、「今の世界と似ている」とも感じました。
町中にうじゃうじゃいる「監視ロボット」は、現代の「監視カメラ」を彷彿とさせるし、
全員匿名の「裁判」は、「ネットの掲示板の炎上」を思わせます。
そして「個人崇拝」は………。
往々にして「ディストピア」ものは、現実世界への風刺として描かれます。
フィリップ・K・ディックがこの話を書いたのは1960年ごろ。先見の明を感じますね。
03.豆知識
この『いたずらの問題』は、ディックの作品の中でも初期作品になります。
本作品の中で、このあとディックの数々の作品で出てくる設定(「プレコグ」、「惑星移住」、「黒髪の少女」など)がすでに登場していて、この頃にすでにディック作品の世界観が形作られていたことがわかります。
04.さいごに
ディック作品は読みにくいと感じていましたが、『いたずらの問題』は細かい設定もあまりなく、スラスラ読めたので、ディック入門にはちょうどいい一冊かなと思います。
私の評価としては、
ストーリー………★★★★☆
読みやすさ………★★★★☆
面白さ……………★★★★☆
総合………………★★★★☆
という感じです。
それではこの辺で。失礼します。