ウィリアムギブスン『ニューロマンサー』
ウィリアムギブスンのSF、『ニューロマンサー』を読みました。
「サーバーパンク」というジャンルの火付け役なようで、SF好きな人の中では結構有名なそうです。(私は知りませんでした。)
「ヒューゴー賞」「ネビュラ賞」という賞も受賞しており、権威ある作品といえるでしょう。
そこで今回は『ニューロマンサー』の感想や豆知識などをお話ししていきます。
01.ざっくりどんな話?
「主人公がネット世界で巨大ネットワークを倒す話」です。
SFよろしく物語は「ネット世界」の中で進んでいきます。
主人公ケイスは、体を離れてネット世界の中に意識を移すことができます。
ケイスはネット世界の中で行動し、「物盗り」をしています。(「ハッキング」のようなものをイメージすればよいでしょう。)
雇い主を裏切り、一度はネット世界に入る能力を失いますが、「ヤバい仕事」を引き受けるかわりに能力を再び手に入れます。
そしてケイスは巨大ネットワーク「ニューロマンサー」を倒すべく、ネット世界で奔走しますーーー。
02.読後の感想
読みながら感じたことは、「新しいなあ」ということです。
本作品が書かれたのは1986年ですが、今読んでもまったく不自然がありません。
それどころか、今読んでも先見の明があるなあと思える記述がたくさんあります。
たとえば、「現実」世界でケイスはこう嘯きます。
「肉だ。すべて肉の問題だ。」
ネット世界ならば瞬間移動もできるし、死ぬこともないでしょう。
でも現実ではどうでしょう。
どこに行くのにも「体」が必要だし、「体」が衰えれば「死」に近づきます。
「ネットの」世界とは違い、「現実の」世界では、いつも「肉体」の問題がつきまといます。
それをケイスは「肉の問題だ」と言っているのです。
これは、ネット世代になった現代だからこそ、共感できる人も多いのではないでしょうか。
さらに、この作品には「AI(人工知能)」が登場します。
キャラクターたちの会話で、
「賢さは犬並み、ペット並み」「すごく金がかかる」と言われており、本作品が書かれたころのAI観を知ることができます。
また、本作品のような世界観や考え方は、私の大好きな森博嗣さんと似ているなと感じました。(森博嗣さんについては、のちほどじっっっっっっくり語りたいと思います。)
森博嗣の作品の中でも、主人公が肉体を離れてネット世界で活動したり、「現実」の再構築が行われています。(「ネットの世界は非現実か?」のような議論がなされています。)
ウィリアムギブスンにしても、森博嗣さんにしても、その作品はみな20世紀に書かれたものばかり。それなのに現代の世界を見て書いているかのようです。両者の先見の明に驚かざるを得ません。
03.豆知識
本作品には、「チューリング警察」なるものが登場します。
作中ではAIが「チューリング警察の限度まで賢いものもある」と紹介されています。
この「チューリング」なるものが何なのか……。
おそらく、イギリスの学者、アラン・チューリングを元ネタとしているのだと思います。
結構有名な人で、「イミテーション・ゲーム」という映画の主人公になっています。
彼は、人間とAIを見分ける「チューリング・テスト」を考案しました。
これは、「ネットで会話している相手が人間か、AIか?」を識別するためのものです。
実際にアラン・チューリングはAIととても関わりの深い人間で、それが本作品でも受け継がれ、AIを監視する機関「チューリング警察」として登場しているのでしょう。
「人間かAIか識別できないくらい人間っぽい」ということは、実際に今起きていますよね?(LINEのあの女の子とか)
いつかAIが人間を超える日が来るのか……。SFの夢は終わりません。
それではこの辺で。失礼します。