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太宰治『人間失格』

「まさに廃人。」

 

太宰治の最晩年の作品『人間失格』を読みました。

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本作品は走れメロスに並んで太宰治の作品の中でもとりわけ有名です。

また新潮文庫の累計発行部数は、驚きの657万4000!!!歴代堂々の2位です。(ちなみに1位は夏目漱石の『こころ』673万7500です。圧勝。笑)

 

そんな誰でも聞いたことのある『人間失格』。でも実際に読んだことがある人はそれほど多くはないかもしれません。

 

そこで今回は『人間失格』がどんな話なのか、また読後の感想などをお話ししていきます!

 

 

 

 

 

01.ざっくりどんな話?


「主人公大庭葉三(おおばようぞう)の絶望人生録」です。

 

本作品は、「葉三の手記」という形で話が進んでいきます。いわば自伝です。

彼の手記は、

 

「恥の多い人生を送ってきました。」

 

という印象的な書き出しで始まります。

 

小さい頃から「人間の生活」というものがわからず、葉三は他人の感情を理解することに苦労します。また葉三自身もそのような「人間の」生活を送りたいとは思っていなかったのです。

 

そんな葉三が世間と繋がっている「フリ」をするために身につけた術が「道化」でした。

 

他人の前で道化を演じることで、彼は自分の本音を隠し、日々の生活をうまくやりすごします。

 

しかし、葉三は幼少期から、いわゆる「モテる」男の子でした。

幼少期から、身の回りの人間に性的虐待を受けながら、彼の自意識は成長していきます。

 

そして青年になった葉三は、やはり女性からモテます。

自分を隠し、道化を演じれば演じるほど、女性を惹きつけてしまうのです。

 

そんな自分に嫌気がさし、恋した女性とともに入水自殺を試みますが、女性だけが死に、葉三は助かります。

 

そして葉三は警察に逮捕されますが、彼が感じたのは、罪悪感ではなく安堵でした。

 

彼は心のどこかで、自分の本性を暴かれることを期待していたのかもしれません。

 

その後、彼がはじめて心から信頼した女性に裏切られ、彼の人生は転落していきます。

酒漬け、薬漬け、廃人のような生活を続けます。

 

そして彼が送られた場所は、脳病院。

 

彼はいよいよ自分に「失格」の烙印を押します。

 

「人間、失格。

もはや、自分は、完全に、人間ではなくなりました。」

 

彼が彼自身の理想像に準じきれなかったことを、自分自身で認めた瞬間と言えるでしょう。

27歳の葉三は、白髪も増え、たいていの人から40歳以上に見られるようになりました。

 

 

 

02.読後の感想


実は『人間失格』を読むのは今回で2回目でした。

 

初めて読んだときは「わからない」と思いました。

 

これは私がモテないからかもしれません。(そこ!笑わない!!!)

 

主人公の葉三に感情移入できなかったのです。

 

しかし今回は違いました。

共感はできないまでも、「(少しは)理解」できたかな、と思ったのです。

 

そういう人っているよね、って。

 

 

……私の性格と、葉三の性格とで、重なる部分もあります。

でも、やはり彼の性格を完全に「理解」することはできないと思いました。

私が完全に理解できるほど単純な人間ではないだろうし、それほど浅い作品でもないと思うのです。

 

 

しかし、彼の考えで、ひとつ「これは共感できる」というものがありました。

それは、

 

「世間とは、個人のことかもしれない」

 

というものです。

 

葉三が友人に「それは世間が許さないよ」と言われるシーンがあります。

それに対して、葉三は

「世間とは、あなたのことでしょう?」

と言い返すのです。

 

「世間が許さない」「世間の常識」「世間の判断」

 

これらの「世間」とは、誰のことを指しているのでしょう?

誰を含み、誰を含まないのでしょう?

 

葉三は、「世間」というものを、「発言している『あなた』自身のこと」だと考えたのです。

 

私もこれと同意見で、なんだか自分の考えが認められたような気分になりました。

 

 

このように、読書をすることで、自分の価値観を再認識し、見つめ直すきっかけとすることができるのです。

 

 

03.さいごに


今回『人間失格』を読んだことで、少しながら、葉三の心情に迫ることができました。

今度また読む機会があれば、さらに彼の「こころ」に肉薄していきたいと思います。

 

 

 

 

 

それではこの辺で。失礼します。