オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』
突然ですが、あなたは幸せになりたいですか?
ほとんどの人が、「イエス」と答えるでしょう。
それでは、質問を変えましょう。
幸せを義務付けられるとしたら、あなたはそれを望みますか?
あなたはいついかなる時も、「幸せでなければならない」のです。
……そんなユートピアの限界を描いたのが、
オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』です。
ジョージ・オーウェルの『1984年』と並んで、ディストピア小説の代表とされています。
今回はこの『すばらしい新世界』についてお話ししていきます。
01.さっくりどんな話?
「ディストピア小説」です。
「ディストピア」という言葉を聞いたことがない人のために、簡単に説明すると、
「ディストピア」とは、「こんな世界は嫌だ」という世界を描いたものです。
「ユートピア」の対義語として作られたことばです。
なので、この本では、「こんな世界に住みたくない!」という世界が描かれています。
……技術社会が発展し、この世界では、今の世界では考えもしないことが起こっています。
西暦2049年に大戦争が起こったのち、世界は「安定」を求めて高度な管理社会と化します。
従来までのキリストなどの「宗教的神」は排除され、大量生産・大量消費を実現した、「T型フォード」の生みの親のフォードが「技術的神」として崇められています。
人間は溶媒瓶の中で「人工授精」され、生まれた時から遺伝子操作されています。
生まれた時から「α」「β」のように階級が決まっていて、その階級に見合った教育しかされません。(「α」のように高い位の赤ちゃんはエリート教育をされますが、下の階級になればなるほど、「わざとバカに育てる」という政策が取られています。)
そして人々が不満を持ったりしないように、「幸福薬」というものが支給されていて、それを飲むといつでも「幸福な」気持ちになることができます。
このように、政府に徹底的に管理され、争いも不満もなく、みんながみんなのために働き、人々は「幸せに」暮らしています。
まさに「すばらしい新世界」なわけです。
……そんな世界に、この「世界」の外にある、「蛮人保存地区」から「野蛮人」がやって来ます。この「世界」とは何もかもが違う世界で育った「野蛮人」は、この世界に馴染みつつもある違和感を覚えてーーーーー
02.読後の感想
この本を読んで感じたことは、
「この世界がいつか現実化するのではないか」
というものです。
「こんな世界は嫌だ」「こんな世界はありえない」
と「フィクション」として書いていながらも、
「こんな世界がありはしないか?」「こんな世界もあり得るぞ」
と訴えて来ているように思えました。
また、作中で野蛮人が、「不幸になる権利を要求する」と叫ぶシーンがあります。
「幸福」が義務付けられた世界では、「不幸」は許されない。
「不幸」があるから「幸福」もある。
「義務付けられた」幸福なんて、「幸福」じゃない。
「幸福」は「義務」ではなく「権利」であるからこそ、価値があるものなのだ。
そう教えられました。
03.おわりに
この本の私なりの評価は、
面白さ………………★★★★★
ストーリー…………★★★★★
読みやすさ…………★★★★☆
総合…………………★★★★★
です。
それではこの辺で。失礼します。