乙野四方字『僕が愛したすべての君へ』
久しぶりに本を読んでボロボロ泣きました。
恥ずかしいくらい、泣きました。
今回は、私を久しぶりに泣かせた、
乙野四方字さんの『僕が愛したすべての君へ』という本を紹介します。
01.ざっくりどんな話?
ざっくり言うと、「パラレルワールド×恋愛」の小説です。
この本の世界では、「人間が無意識にパラレルワールドを移動している」という設定です。
たとえば、あなたが昨日一番上の引き出しにしまった(、と思っている)消しゴムが、今日になって見つからないとします。
そしていろいろ探しているうちに、一番下の引き出しで見つかったとします。
あなたはこう思うはずです。
「んー。たしかに一番上にしまったと思うんだけどなあ……。まあ勘違いか」
このとき、あなたは「消しゴムを一番下にしまったパラレルワールドに移動していた、というわけです。
……こんな世界で、ある男の子が女の子にスポットライトが当たります。
男の子と女の子は同じ高校のクラスメイト。でもお互い一度も話したことはない。
でも、ある日、女の子に声をかけられます。
私は別の世界だと、あなたと恋人同士なの—————
こんなことを突然いわれ、男の子の人生は大きく変わっていきます。
そしていつしか大人になり、彼らはある一つの問題にぶつかります。
「別の世界の自分は、本当に自分なんだろうか?」
「自己」とは何か。そして別世界の「きみ」を愛せるか。
さまざまな世界線を行き来し、彼らのラブストーリーは進んでいきます。
そして最後に、彼が導きだした結論とはーーーーー
02.この本のスゴいところは?
とにかく泣けることです。
今風に言うと、「エモい」部分がたくさん散りばめられています。
「誰かを愛する」ということ、その尊さを、改めて感じさせられました。
また、恋愛要素もバッチリなのですが、SF要素も満載なのです。
「パラレルワールド」はSFにありがちな設定ですが、しっかり細かくパラレルワールド説明もなされています。(作中では「虚質」(「物質」と対をなす概念)という概念を用いて説明しています。「今のところ」、SFの域を出ませんが……)
この話の設定が、いつか本当になるのではないか、いや、もしかしたら現実世界もこのようなパラレルワールドなのではないか……。そう思わせるリアルさがありました。
03.豆知識
先程チラッと話した「虚質」による「パラレルワールド」ですが、これは現実世界の「量子力学」を基にしていると思われます。(あまり詳しくないので、まちがっていたらごめんなさい。)
みなさん「シュレディンガーの猫」という言葉を聞いたことがありますか?
すごーくざっくり言うと、
「部屋の中にいるネコは、ドアを開けて確かめるまで、生きてるか死んでるかわからない」
「だから、『生きてもいるし、死んでもいる』と言える」
というものです。
なわけねえだろ!
と思いますよね。
でも、生きている「可能性」と死んでいる「可能性」の両方がある、というイメージはつくと思います。
この本でも、そのような「可能性」の世界を、パラレルワールドとして描いているのです。
僕とあの子が付き合っている「可能性」のある世界ーーーーー
それを考えるだけで、ウルっときてしまいました。(涙もろいだけでしょうか、、、笑)
04.さいごに
実は、この本にはセットの本があります。
『君を愛したひとりの僕へ』
という本です。
これは、この本で選ばれなかった「可能性」の世界を描いた、「もう一つの」ストーリーです。
……しばらく徹夜が続きそうです。
それではこの辺で。失礼します。